かくまつとむ『糧は野に在り』

竿は奄美でコサン竹と呼ばれる布袋竹。長さと先細りの加減がほどよく、皮が厚く節の数も多いので張りがある。(中略)今でこそ釣り専用の糸やオモリを使っているが、昔は糸がタコ糸で、オモリもそのへんに落ちている錆びたネジだった。

糧は野に在り: 現代に息づく縄文的生活技術
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松木武彦『列島創世記』

物の形や材質や色彩は、文化の正体ともいえる共有された「知」に発するものであることは、何度も述べてきた。また、そこから発した同じ人工物の世界で育ち、生きることが、その体験を共有した人びとの一体感や共通感覚を高めていくこともみてきたとおりだ。人びとの心と行為とが物を生み出し、生み出された物が人びとの心や行為を織りなしていく。ヒトと物とは、そのような双方向的な関係にある。

松木武彦『美の考古学』

埴輪の多数配列、鏡などの副葬品の多量集積。文化の個性を、物によって人の心を引きつけること、すなわち美の演出の方向性という面からとらえると、古墳の文化は、同じものをたくさん並べ、集めることによる「量の美」を、その本質としている。

美の考古学: 古代人は何に魅せられてきたか (新潮選書)
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