中沢新一『アースダイバー』
生命は死に触れているからこそ豊かなのである。死との触れあいを失った生命は、もはや別の意味での死を生きることになる。宗教というのは、生と死が別々のものではなく、ふたつが一体となって、この世の豊かな現実はつくられている、と教えてきた。
その意味で、東京タワーはその存在自体が、ひとつの生きた宗教的思考なのである。この鉄塔は、芝のこの土地に建てられなければならない必然性があった。そしてマダム・タッソー系の蝋人形が置かれるのに最適の空間を、東京に探すとしたら、やはりこの塔の内部につきるのではないだろうか。