荒俣宏『アラマタ美術誌』

 つまり、天皇の魂を鎮めるためにお墓を作り葬儀をおこない、本当だったら、その天皇が愛した女性やあ るいは官僚たちも一緒に命を捨て、あの世で同じような暮らしをさせられるところを、土の人形によってそのシステムを変換した。つまり近代化したわけですね。この作業を担ったのが、左官屋さんの元祖なんです。つまり、ハニワこそは『鏝絵』の元祖なのです。人の命に代わる『飾り』なのです。彼らはうわべを飾 ることにより、人の無駄死にを救ったんです。それだけではない。子孫にとって一番重要な、霊を送る、鎮める儀式の大きなシステムを作った人なんです。これ が左官なんです。一見したところ壁を塗ってるだけなんだけれども。ルーツを辿るとたいへん古い、しかもマジカルな役職につながっているんですね。


アラマタ美術誌
アラマタ美術誌
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荒俣 宏
新書館
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