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E.J.ラッセル『土壌の世界』

土壌は外見的に固体の密集したかたまりにみえるが、事実はそうではなく、全容積の約1/2のみが固体であり、残りは孔隙で空気と水で満たされている。孔隙 は孔や微細な通路や肉眼的に見えぬ裂け目に分かれているので全貌をそのまま正確に知ることはできない。これらの孔隙の小さな部分は水で満たされ、一方大き な部分は空気で満たされている。このような土壌空気は、拡散が迅速に起こるために、大気とほぼ同程度の酸素を含んでいるが、大気よりも多くの炭酸ガスを含 み、水蒸気で飽和されている。土壌水は、溶解した無機物や有機物を含んでおり、これらの多くは養分として利用される。土壌水は、酸素を飽和して浸入し可能 な限り土壌全体にわたってひろがって行く雨水で更新される。土壌の固体部分は無機物と有機物の混合物であり、両者とも養分元素を含むが、有機物はまたエネ ルギー源をも含んでいる。すなわち、土壌の固体部分は無機や有機の物質からなるゼリーで覆われた粒子である。
 土壌中の温度は大気中に比べて年間 の変動が小さく、冬に下がらず、また夏に上らず、ごく表面を除けば土壌はかなりの温度変化から守られている。有害物質が土壌中の化学変化――酸素欠乏下で の還元反応や降雨による石灰の流ぼう;後者は酸性化を起こす――によって生成されることもあるが、こうした変化は例外的にしか起こらず、土壌のpH変化に 対する緩衝能も非常に高い。このように土壌には、空気、水、養分、温和な温度、エネルギーの供給源、著しく有害な因子の欠如など生命に必要なすべての条件 が存在している。そこに欠如している環境因子は日光だけである。生命は可能な所であればどこにでも発生するという一般的原則にしたがって、土壌中にも土壌 条件に適応した、そして日光の欠如によって生命活動が妨害されない驚異的な生物集団が発達している。かれらは日光にほとんど適応していないので、大部分は 日光によって死滅する。


土壌の世界 (1971年)
土壌の世界 (1971年)
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E.J.ラッセル
講談社
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