カレル・チャペック『園芸家12ヶ月』
湿り気があって、フカフカで、いつでも耕すことができる。そういう土が、いまここにあるとする。きみは、自分の勝利を確かめるために、その土を手でつかみ、指でボロボロにくずして、こねたくなる。そして、そこに植えようと思っていた 花のことなんか、もうぜんぜん、きみは考えない。この黒ぐろとした、空気をふくんだ土のうつくしい眺めだけでたくさんではないか?パンジーやニンジンの植わっている花壇なんかよりも、よっぽどこのほうがすばらしいではないか?栽培土という、人間のつくったこんな貴重なものを占領する植物に、むしろきみは嫉妬を感ずるだろう。p144