信沢 寅男『エネルギー工学のためのエクセルギー入門』

冬の東京を考える。外気の温度を0度とすれば、外界の水の温度もほぼ0度であると考えてもよい。このとき、たとえば80度の温水が1Kgあったとすると、これに外界の水1Kgを加えて混ぜ合わせると、容易に40度の水2Kgにすることができる。これまでの考え方(熱力学第一法則)からするとエネルギーの損失は全くないのである。ところが、40度の水2Kgだけで、外からエネルギーを加えることなしには、80度の水1Kgをつくることは絶対にできないのである。すなわち、逆は成り立たないのである。とすると、初めに温度の異なる水を混ぜ合わせたときに、なんらかのものが失われたと考えることが合理的である。そのなんらかのものがエクセルギー(exergy)と呼ばれるものである。エクセルギーはすべてのエネルギーに含まれている。すなわち、熱ばかりではなく、電気にも、光にも、波にも、化石燃料にも、そして核燃料にも含まれているのである。