和田晴吾『古墳時代の葬制と他界観』

すなわち、古墳時代には、首長が死ぬと、その魂(魂気)は船に乗って他界へと赴くと観念されていたが、実際の葬送儀礼においては、一定期間のモガリ儀礼を行った後に、魂が他界へと旅立つ様子を現実の世界で再現すべく、遺体を実物大の飾られた船に乗せて牽引し、「他界の擬えもの」である古墳へと誘ったものと考える。さらに言えば、古墳の出入口に停泊する船をかたどった船形埴輪は、古墳から他界へと旅立つ船ではなく、首長の魂が間違いなく他界へと到着したことを示す船だと理解されるのである。

古墳時代の葬制と他界観
和田 晴吾
吉川弘文館
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