『古墳時代の工芸』

鏡の制作技法の研究は、多くの研究者によって考察されている。大きくみると直接型から鏡を鋳出す直笵鋳成法と、母型翻写笵鋳成法の二つが考えられる。直笵鋳成法は、石や土に文様を陰刻する方法である。仿製三角縁神獣鏡にみられる笵の補刻や修正は、石製では不可能と思われ、土の補填可能な土型であったと思われる。元来、土型は鋳造時に笵が破壊してしまい、複数の鏡、すなわち同笵鏡は作れないとされているが、先述のように、古代の工人は、壊れた笵を接合し、補修することで複数鋳造を可能にしたのである。(八賀晋

古墳時代の工芸 (古代史復元)

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和田晴吾『古墳時代の葬制と他界観』

すなわち、古墳時代には、首長が死ぬと、その魂(魂気)は船に乗って他界へと赴くと観念されていたが、実際の葬送儀礼においては、一定期間のモガリ儀礼を行った後に、魂が他界へと旅立つ様子を現実の世界で再現すべく、遺体を実物大の飾られた船に乗せて牽引し、「他界の擬えもの」である古墳へと誘ったものと考える。さらに言えば、古墳の出入口に停泊する船をかたどった船形埴輪は、古墳から他界へと旅立つ船ではなく、首長の魂が間違いなく他界へと到着したことを示す船だと理解されるのである。

古墳時代の葬制と他界観
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